40年。その間STUDIO機材、楽器、コンピュータ、ソフトウェアは予想もしなかった速さで進化してきました。初めてミキシングコンソールの前に座ったときは、MCIのコンソールと手元に24CHアナログテープレコーダーでしたが、今はPCとオーディオインターフェイス。同じなのは目の前にスピーカーがあって音楽が聞こえていること。キャリアを通じて、誰もやらないことをやることを目指して来たのですが、初期のアナログの時代はやれることが少ないぶん、何かやるには相当なアイデアと膨大な時間が必要でした。その経験が逆に、テクノロジーが一つ開発されると、その技術で可能になる事に歓喜してきました。この40年で開発された数えきれないテクノロジーで可能になったり、あんなに何時間も掛けてやっていた作業が一舜で出来るようになったりしています。アイデアさえあればすぐに試せるという夢のような時代になりつつあると思います。それでも、いまだに実現できてない事もたくさんあるので、今後もテクノロジーを模索していくんだと思います。

様々な音楽を60年代からリアルタイムで体験することが出来たのは幸運だと思っています。それが今の自分の土壌を作ってくれてているのは確かです。が、「あの頃の音楽は良かったね」という言葉は自分の中では禁句にしています。理由は、「あの頃のいい音楽」はいつの時代にも存在するからです。仮に今の時代にいい音楽を見つけられなくなったら、それは時代に置いて行かれています。そう感じるときには、音楽制作に関わるのは辞めるべきだと思っています。今の音楽を浴び続けることだけは続けています。

理解するのが難しくても、新しい音楽を浴び続ければ理解し好きになる事が出来ます。数年後にはそれが「あの頃の良い音楽」として自分の頭に刻まれ、古い音楽として認知されて行くことになります。年齢とともに理解し好きになるのに必要な時間は増えて行ってますが、このルーティーンだけは続けて行きたいと思っています。